日本の戦国時代における黒糸威横矧具足の研究
1. はじめに
本報告書は、日本の戦国時代に特徴的に見られる甲冑(鎧兜)の一形式である「黒糸威横矧具足(くろいとおどしよこはぎぐそく)」について、その呼称を構成する各要素の分析から始め、具体的な構造、使用された素材、製作技法、さらにはそれが登場した歴史的背景、代表的な現存作例、そして文化財としての意義に至るまでを包括的に調査し、詳述することを目的とする。特に、現存する作例や関連する歴史史料、絵画資料などを参照しつつ、当時の武士の戦闘様式や美意識、甲冑製作技術の到達点などを多角的に考察する。
戦国時代は、応仁の乱(1467年~1477年)以降、日本各地で武力衝突が頻発し、それまでの戦闘様相も、個々の武者の技量を重視した一騎討ち中心から、足軽など雑兵も含む大規模な集団による組織的な戦闘へと大きく変容した時代である。この合戦形態の変化は、武器の進化、特に鉄砲の伝来と普及を促し、それに伴い武士の身を守る甲冑もまた、大きな変革を迫られた。従来の伝統的な大鎧や胴丸といった形式から、より実戦に即し、高い防御力を持ちながらも運動性を確保し、さらには一定の量産性も考慮された「当世具足(とうせいぐそく)」と呼ばれる新しい様式の甲冑が主流となった
1
。
「黒糸威横矧具足」は、この当世具足の一つの典型と言える。その名称が示す通り、「黒糸」で威され、「横矧」という技法で製作された「具足」である。黒色の威糸(おどしいと)を用いることによる実用性や武家の気風の反映、そして鉄や革の板札(いたざね)を水平方向に連結する横矧の技法による堅牢性などが、この形式の甲冑の主な特徴として挙げられる。本報告書では、これらの特徴が戦国時代の社会的、技術的、そして文化的背景とどのように深く結びついていたのかを明らかにしていく。
2. 「黒糸威横矧具足」の定義と基本的構成要素
「黒糸威横矧具足」という呼称は、その甲冑の主要な特徴を示している。具体的には、「黒糸威」、「横矧」、そして「具足」という三つの要素から成り立っている。以下、それぞれの要素について詳細に解説する。
2.1. 黒糸威(くろいとおどし)
「黒糸威」とは、甲冑の小札(こざね)や板札を繋ぎ合わせるための組紐である威毛(おどしげ)に、黒色の糸を用いる技法、またはそのように黒糸で威した甲冑そのものを指す
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。
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「黒糸」の素材:
甲冑の威しに用いられる糸の素材としては、主に絹糸が使用されたが、耐久性や入手の容易さから麻糸や木綿糸も用いられることがあった 5。戦国時代においては、特に上級武士が使用するような質の高い具足では、光沢や染色性に優れた絹糸が主流であったと考えられる。7の細川忠興所用とされる黒糸威横矧二枚胴具足の兜の忍緒には黒麻平紐が用いられている例もある 7。
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「黒糸」の染色技法:
黒色の染料を得るための伝統的な技法としては、主に植物染料と媒染剤(ばいせんざい)を組み合わせる方法が用いられた。
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植物染料と媒染剤
: 日本古来の染色では、特定の植物(例えば、檳榔子(びんろうじ)や藍(あい)、あるいは後の時代にはログウッドなど)から抽出した色素液に、染料を繊維に固着させ、発色を促すための媒染剤(例えば、鉄分を多く含む泥水や鉄漿(おはぐろ)、あるいは灰汁(あく)など)を作用させることで様々な色を得ていた
8
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檳榔子染(びんろうじぞめ)
: ヤシ科の植物である檳榔子の種子を用いた染色は、江戸時代に武士の黒紋付などに愛用された記録があり、その染料に含まれるタンニンが絹地を強くするとも言われた
8
。この耐久性を向上させる特性から、戦国時代においても武具の糸や革の染色に利用された可能性が考えられる。
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鉄媒染(てつばいせん)
: 鉄分を含む媒染剤は、黒色や紺色、茶色などの暗色を発色させるために広く用いられた技法である
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。植物染料で下染めを行った後に鉄媒染を施すことで、より堅牢で深みのある黒色を得ることができた。
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藍染めによる黒
: 藍を濃く染め重ねた色は「搗色(かちいろ)」と呼ばれ、「勝つ色」として武士の間で縁起が良いとされ、武具や衣服に好んで用いられた
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。この搗色をさらに濃く染め上げることで、黒に近い色調を得ることも行われた。
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その他の黒色染料
: 史料によっては、黒漆で染めたかのような記述や、墨を用いた染色なども考えられるが、威し糸のような柔軟性が求められる素材には、染料による染色が一般的であっただろう。
黒糸威が戦国武士に好まれた背景には、単に色彩の好みだけでなく、いくつかの複合的な要因が考えられる。まず、黒色は汚れが目立ちにくいという実用的な利点がある。また、黒は武家の質実剛健な気風や威厳、精強さといったイメージを想起させ、戦場における視覚的な効果も期待されたであろう。さらに、前述の檳榔子染のように、特定の染料や媒染方法が糸の耐久性を高めるという実質的な効果も重視された可能性がある。これらの要素が、黒糸威という選択を促したと考えられる。染色技術は高度な専門知識を要するため、甲冑師の流派や工房、あるいは生産地域によって独自の技法や秘伝が存在した可能性も否定できない。
2.2. 横矧(よこはぎ)
「横矧」とは、甲冑の胴などを製作する際に、小札板(こざねいた)や鉄板といった板状の素材を、鋲(びょう)や紐、革緒などを用いて水平(横)方向に繋ぎ合わせていく技法を指す
15
。この技法で作られた胴を「横矧胴(よこはぎどう)」と呼ぶ。
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板札(いたざね)
: 横矧胴の主要な構成要素は板札である。これは、古来の甲冑で用いられた小さな小札を横一列に繋ぎ合わせて一枚の板のようにしたもの、あるいは初めから一枚の横長の板として製作されたものを指す
18
。素材としては、鉄または革(主に牛革を加工した練革)が用いられた。特に戦国時代には、鉄砲の登場とその威力の増大に対抗するため、より堅牢な鉄製の板札が多用される傾向にあった
20
。
-
接合方法
: 板札同士を接合する方法にはいくつかのバリエーションがある。
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鋲留め(びょうどめ)
: 板札同士を鉄製の鋲で直接固定する方法
15
。この方法は比較的製作が容易で、堅牢な胴を効率よく作ることができた。
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綴じ技法(とじぎほう)
: 威し糸や革緒などを用いて板札を綴じ合わせる方法。具体的には、菱形に糸を交差させて綴じる「菱綴(ひしとじ)」や、平行に渡した糸で固定する「畦目綴(うなめとじ)」などの技法が見られる
16
。
18
では桶側胴の矧ぎ留め方法として鋲綴、菱綴、胸目綴が挙げられており、横矧胴も桶側胴の一種と見なされるため、これらの技法が適用されたと考えられる。
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蝶番(ちょうつがい)の使用
: 鉄や革の板札で構成された胴は、それ自体では柔軟性に乏しく、そのままでは着用や脱衣が困難であった。そのため、胴本体を前後2枚、あるいはそれ以上の複数(多くは2枚から5、6枚程度)のパーツに分割し、それぞれのパーツを蝶番で連結する構造が採用された
18
。これにより、胴を開閉できるようになり、着脱の利便性が大幅に向上した。一般的には左脇に蝶番を設け、右脇で引き合わせて紐で結ぶ形式が多い。
横矧という技法が戦国時代に広く普及した背景には、いくつかの重要な要因がある。第一に、従来の小札を一枚一枚丁寧に威し上げる製作方法に比べ、横長の板札を用いる横矧は製作工程を大幅に簡略化し、甲冑の大量生産を可能にした点である。これは、戦国時代における動員兵力の大規模化と、それに伴う甲冑需要の増大に直結するものであった
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。第二に、鉄砲という新たな脅威の出現である。鉄砲の弾丸は従来の甲冑では防ぎきれない場合が多く、より高い防御力が求められた。板札、特に鉄製の板札は、小札を重ねた構造よりも一枚の面積が大きく、衝撃に対する耐性が高いため、対鉄砲防御の観点からも有利であったと考えられる
20
。このように、横矧の技法は、戦国時代の戦術的・技術的な要請に応える形で発展し、当世具足の主要な製作技法の一つとして確立されたのである。
2.3. 具足(ぐそく)
「具足」という言葉は、元来、仏教において仏壇などに備える仏具一式を指す用語としても用いられたが
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、甲冑の文脈においては、兜・胴・袖という主要な防具に加えて、籠手(こて)・佩楯(はいだて)・臑当(すねあて)といった身体の各部分を保護する小具足(こぐそく)類を含め、全身を防御するために必要な武具が一揃い完全に備わっている状態、またはその一揃いの甲冑そのものを指す
1
。
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当世具足における「具足」:
特に戦国時代後期から安土桃山時代、江戸時代初期にかけて登場した新しい形式の甲冑は「当世具足」と総称される。これは文字通り「当世風の、すなわち現代風の、すべてが備わった甲冑」という意味合いを持つ 1。従来の甲冑に比べて、より実戦的で機能性に富み、全身を隙間なく覆うことを目指して各部の防具が改良・追加された結果、文字通り「具足」するに至ったのである。
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「黒糸威横矧具足」の構成部品:
「黒糸威横矧具足」も当世具足の一種であるため、一般的に以下の構成部品から成る。細川忠興所用とされる黒糸威横矧二枚胴具足の例 7 を参考に、各部品の概要を示す。
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兜(かぶと)
: 頭部を保護する。鉢(はち)、𩊱(しころ)、眉庇(まびさし)、立物(たてもの)などから構成される。黒糸威横矧具足では、実用的な頭形兜(ずなりかぶと)や筋兜(すじかぶと)などが用いられることが多い。
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胴(どう)
: 胸部、腹部、背部といった身体の最も重要な部分を防護する。本報告書の主題である横矧胴が用いられる。多くは二枚胴形式で、左脇に蝶番、右脇で引き合わせる。
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袖(そで)
: 肩から上腕部を保護する。当世具足では、白兵戦での腕の動きを重視し、大鎧のような大型のものから小型化する傾向が見られる。
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籠手(こて)
: 前腕部および手首、手の甲を保護する。篠籠手(しのごて)、鎖籠手(くさりごて)など様々な形式がある。
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草摺(くさずり)
: 胴の裾から垂下し、腰部から大腿部を保護する。数間(通常5~9間程度)に分割され、動きやすさを確保している。
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佩楯(はいだて)
: 大腿部の前面から膝にかけてを保護する。エプロンのような形状のものが多い。
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臑当(すねあて)
: 脛部および足首周辺を保護する。篠臑当や筒臑当などがある。
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面頬(めんぽお)/頬当(ほおあて)
: 顔面の下半分や喉元を保護する。威嚇的な表情をかたどったものや、実用本位の簡素なものまで多様である。
「具足」という呼称が示すように、当世具足は、個々の武勇に頼るだけでなく、集団としての戦闘能力を最大限に発揮するために、兵士一人ひとりの生存性を高めることを目指した結果、全身を覆う各部位の防具が相互に連携し、より高度な防御体系として統合されたものと言える。これは、戦国時代の戦闘における武器の進化(特に鉄砲や長槍の集団運用)と、それに対応するための戦術思想の変化を色濃く反映している。
2.4. 関連する胴形式との比較
「黒糸威横矧具足」をより深く理解するためには、当世具足で用いられた他の主要な胴形式との比較が不可欠である。以下に、横矧胴と関連性の高い、あるいは比較対象となる胴形式について、その特徴を整理する。
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桶側胴(おけがわどう):
桶側胴は、鉄や革の板札を、威し糸を用いずに鋲(びょう)や綴じ紐などで直接連結して製作した胴の総称である 16。その外観が桶の側板を組み合わせたように見えることからこの名がある 15。桶側胴には、板札を水平方向に連結する「横矧(よこはぎ)」と、垂直方向に連結する「縦矧(たてはぎ)」の二つの主要な形式が存在する。したがって、横矧胴は桶側胴の一種と位置づけられる。
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二枚胴(にまいどう):
二枚胴は、胴を前胴と後胴の大きく二つの部分に分割し、一方の脇(通常は左脇)を蝶番で連結し、もう一方の脇(通常は右脇)で引き合わせて紐などで固定する形式の胴である 16。この構造により、着脱が容易になる。横矧胴も、この二枚胴の形式で製作されることが非常に多い。例えば、細川忠興所用の黒糸威横矧具足は二枚胴である 7。
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縦矧胴(たてはぎどう):
縦矧胴も桶側胴の一種であり、板札を垂直方向に連結して製作される 16。横矧胴とは板札の接合方向が異なる点が最大の違いである。
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仏胴(ほとけどう):
仏胴は、胴の表面に小札や板札の継ぎ目、段差などがなく、あたかも仏像の胸部のように滑らかに仕上げられた胴を指す 16。製作方法としては、一枚の大きな鉄板を打ち出して成形する場合と、桶側胴(横矧胴や縦矧胴)の表面の継ぎ目を漆や木屎(こくそ:漆に木粉などを混ぜたパテ状のもの)で埋め、平滑に研ぎ出して仕上げる場合がある 16。
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菱綴胴(ひしとじどう):
菱綴胴は、桶側胴の板札の接合方法の一つで、革緒や組紐などを用いて菱形に綴じ合わせる技法、またはそのように製作された胴を指す 16。横矧胴の板札接合にもこの菱綴じの技法が用いられることがある。例えば、「鉄黒漆塗紅糸菱綴碁石頭横矧二枚胴具足」24 のように、名称に「横矧」と「菱綴」が含まれる作例も存在する。
これらの胴形式は、それぞれ製作技法や構造、そして結果として得られる防御力や運動性、さらには外観の美意識において特徴がある。戦国時代の武将たちは、自身の戦闘スタイルや経済力、所属する勢力の慣習、あるいは甲冑師の流派や地域の特色などを考慮して、これらの多様な胴形式の中から最適なものを選択、あるいは特注したと考えられる。「黒糸威横矧具足」という呼称は、まず威糸の色(黒糸)、胴の主要な構造(横矧)、そして甲冑が一揃いであること(具足)を示している。これに、例えば「二枚胴」という全体の構成や、「桶側胴」というより広範な製作技法の分類、「菱綴」といった具体的な接合方法などが加わることで、個々の甲冑の具体的な姿がより明確になる。
表1:主要な胴形式の構造比較
形式名 (読み)
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主な時代
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構造的定義・特徴
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主要素材
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威しとの関係
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代表的な利点・欠点
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横矧胴 (よこはぎどう)
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戦国~江戸初期
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板札を水平方向に連結(鋲留め、各種綴じ)。多くは二枚胴または五枚胴形式。桶側胴の一種。
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鉄、革
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板札の連結に威し糸を用いる場合もある(例:素懸威)。
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比較的製作容易、堅牢。柔軟性は蝶番等で補う。
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縦矧胴 (たてはぎどう)
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戦国~江戸初期
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板札を垂直方向に連結(鋲留め、各種綴じ)。桶側胴の一種。
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鉄、革
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横矧胴に同じ。
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構造的に頑丈だが、横方向の衝撃に弱い可能性も。作例は横矧胴に比べ少ないとされる。
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桶側胴 (おけがわどう)
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戦国~江戸初期
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板札を鋲や綴じで連結した胴の総称。横矧、縦矧を含む。桶の側面に似る。
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鉄、革
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板札自体は威さないが、部分的に装飾や補強で威すことも。
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大量生産向き、比較的安価。多様な形状が可能。
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仏胴 (ほとけどう)
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戦国~江戸初期
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胴表面が滑らかで継ぎ目がない。一枚板打出、または桶側胴の表面加工。
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鉄
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通常、表面に威しは見えない。
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見た目が美しい、弾丸を滑らせる効果も期待された。製作に手間がかかる。
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二枚胴 (にまいどう)
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戦国~江戸初期
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胴を前後の2パーツで構成し、蝶番で連結。
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鉄、革
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胴の表面処理による(横矧や仏胴など)。
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着脱が容易。南蛮胴もこの形式。
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最上胴 (もがみどう)
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室町後期~戦国
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横長の板札を上下に重ねて威しで連結。多くは五枚胴形式。当世具足の先駆け。
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鉄、革
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素懸威や毛引威で板札を連結。
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比較的軽量で動きやすい。防御力は板札の厚みに依存。
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雪ノ下胴 (ゆきのしたどう)/仙台胴
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戦国~江戸初期
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縦長の鉄板5枚を蝶番で連結した五枚胴。伊達政宗が推奨。
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鉄
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通常、威しは部分的に用いられる(例:紺糸素懸威)。
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堅牢だが重量がある。伊達家中で統一的に用いられた。
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南蛮胴 (なんばんどう)
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戦国~江戸初期
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西洋甲冑の胴を流用または模倣。多くは鉄の一枚板打出の二枚胴。
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鉄
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威しは用いられない。
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鉄砲に対する防御力が高い。重い。和製南蛮胴も作られた。
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この表は、各胴形式の基本的な特徴をまとめたものであり、個々の作例によっては細部が異なる場合がある。
3. 歴史的背景と「黒糸威横矧具足」の登場
「黒糸威横矧具足」が戦国時代に登場し、広く用いられるようになった背景には、当時の合戦形態の劇的な変化と、それに伴う甲冑技術の革新があった。
3.1. 戦国時代の合戦形態の変化
戦国時代の合戦は、それ以前の時代とは大きく様相を異にした。
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集団戦術への移行
: 鎌倉時代や南北朝時代に見られたような、個々の騎馬武者の武勇を中心とした一騎討ちや小規模な戦闘は影を潜め、足軽(あしがる)と呼ばれる雑兵を大規模に動員し、槍隊、弓隊、そして後には鉄砲隊といった兵科別に組織された部隊による集団戦術が主流となった
2
。これにより、個人の技量だけでなく、部隊としての統率力や連携、兵站(へいたん)の維持が勝敗を左右する重要な要素となった。
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鉄砲の伝来と普及
: 天文12年(1543年)、種子島にポルトガル人によって鉄砲が伝えられると、その圧倒的な威力と、比較的短期間の訓練で兵士を育成できる利点から、瞬く間に全国の戦場に普及した
1
。鉄砲の登場は、従来の弓矢を中心とした遠戦や、刀槍による白兵戦のあり方を根本から変え、甲冑に対しても、銃弾を防ぎうる高い防御性能が求められるようになった。
3.2. 甲冑の進化:大鎧、胴丸から当世具足への変遷
このような合戦形態の変化は、武士の身を守る甲冑にも大きな進化を促した。
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大鎧(おおよろい)
: 平安時代から鎌倉時代にかけて、主に上級騎馬武者が着用した大鎧は、騎射戦に特化した形式であり、箱型の重厚な胴や大きな袖(そで)が特徴であった
1
。しかし、その構造は徒歩での戦闘や密集した集団戦には不向きであり、戦国時代には実戦での使用は限定的となり、儀礼的な意味合いが強くなっていった。
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胴丸(どうまる)・腹巻(はらまき)
: 大鎧よりも軽量で身体にフィットし、動きやすさを重視した胴丸や腹巻は、元来、下級武士や徒歩武者が用いるものであった
1
。しかし、合戦の主役が徒歩による集団戦へと移行するにつれて、その実用性から上級武士の間にも広く普及した。
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当世具足(とうせいぐそく)
: 室町時代末期から戦国時代にかけて、これらの従来形式の甲冑の長所を取り入れつつ、鉄砲をはじめとする新たな武器の脅威に対応するために開発されたのが「当世具足」である
1
。当世具足は、鉄板を多用することで防御力を格段に向上させるとともに、身体の各部分を隙間なく覆うことを目指した。同時に、戦場での機動性を損なわないよう、軽量化や関節部分の構造にも工夫が凝らされた。
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横矧胴の位置づけ
: この当世具足の胴の主要な形式の一つとして、「横矧胴」が登場する。横矧胴は、鉄や革の板札を横方向に連結して構成されるもので、特に鉄製の板札を用いたものは、鉄砲の弾丸に対する防御力を高めるのに有効であった
15
。また、従来の小札を一枚一枚威し上げる複雑な工程に比べ、板札を用いる横矧の技法は製作が比較的容易であり、戦国大名が多数の兵士に甲冑を供給する必要性が高まる中で、量産性にも優れていた。
3.3. 当世具足の合理性と多様性
当世具足は、戦国時代という極めてプラグマティックな時代の産物であり、その特徴は合理性と多様性に集約される。
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軽量化と堅牢性の両立
: 従来の小札を重ねて威した甲冑に比べ、当世具足では鉄や革の板札を効果的に使用することで、防御力を高めつつも、不必要な重量増加を抑える工夫がなされたものが多い
2
。特に、鉄砲の威力に対抗するため、胴体部分には厚手の鉄板が用いられることが増えた。
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生産性の向上
: 小札を数多く用い、複雑な威しを施す伝統的な甲冑製作は、多大な時間と手間を要した。これに対し、板札を主体とする横矧胴などの当世具足の製作技法は、工程を簡略化し、比較的短期間での大量生産を可能にした
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。これは、戦国大名が常備兵を増やし、大規模な軍団を編成する上で不可欠な要素であった。
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多様なデザインと自己顕示
: 当世具足には、大鎧のような厳格に定められた形式は存在せず、機能性を追求する中で様々な形状や構造が生み出された
1
。特に兜においては、戦場での個体識別や自軍の士気高揚、敵軍への威嚇などを目的として、動植物や器物、あるいは抽象的な形状を大胆に意匠化した「変わり兜(かわりかぶと)」が数多く製作された。これは、下剋上が常態化し、個人の武功や存在感が重視された戦国時代の気風を反映しているとも言える。
当世具足への移行と、その中での黒糸威横矧具足の登場は、単に防具の技術的な改良という側面だけでなく、戦国時代の社会構造の変化(実力主義の台頭)、経済基盤の変動(鉱山開発による鉄の増産、商業の活発化による物資流通の促進)、そして武士の自己表現や美意識の変化といった、多岐にわたる要因が複雑に絡み合った結果として捉えることができる。黒糸威横矧具足もまた、こうした時代の要請と、戦場に生きる武士たちの精神性を色濃く体現した甲冑形式の一つであったと言えるだろう。
4. 「黒糸威横矧具足」及び関連する具足の著名な作例
「黒糸威横矧具足」および、黒糸威や横矧構造を持つ関連性の高い当世具足は、戦国時代から江戸時代初期にかけて多くの武将たちに用いられ、今日にもその作例が伝えられている。ここでは、特に著名なものをいくつか取り上げ、その特徴と歴史的背景を詳述する。
4.1. 細川忠興所用「黒糸威横矧二枚胴具足」(永青文庫蔵)
安土桃山時代、16世紀の作とされ、肥後熊本藩初代藩主である細川忠興(ほそかわただおき、号は三斎)が関ヶ原合戦(慶長5年、1600年)の際に着用したと伝えられる黒糸威横矧二枚胴具足は、その代表的な作例として名高い
7
。この具足は熊本県指定有形文化財に指定されている。
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全体
: 兜、胴、佩楯、籠手、臑当、頬当を完備した典型的な当世具足である
7
。
-
兜
: 黒漆塗の頭形兜(ずなりかぶと)で、特に「越中頭形(えっちゅうずなり)」と呼ばれる形式である。これは忠興が越中守であったことに由来するとも言われる。素材は革製で軽量化が図られている。𩊱(しころ)は板札を黒い皺革(しぼかわ)で包み、黒糸で毛引威(けびきおどし)に、一部は黒い蓑毛(みのげ)で威されている。立物(たてもの)としては、頭頂部に角本(つのもと)を立て、そこに山鳥の尾羽を束ねたものを挿すのが特徴的である
7
。眉庇(まびさし)は大きく、先端が外側に反り返る形状をしている
7
。
-
胴
: 横方向に矧ぎ合わせた板札から成る二枚胴形式である。前胴と後胴から成り、左脇を蝶番で繋ぎ、右脇で引き合わせて開閉する構造で、迅速な着脱が可能であった
7
。胴の構成は、前立挙(まえだてあげ)三段、後立挙(うしろだてあげ)四段、長側(ながかわ)五段で、胸板は革製、その他の主要部分は鉄板札を黒皺革で包んで作られている。胴高は37.8cm、胴廻りは103.0cmと記録されている
7
。
-
草摺(くさずり)
: 胴の裾から垂下し大腿部を保護する草摺は、七間(ななけん)六段で構成され、小札には伊予札(いよざね)が用いられ黒皺革で包まれている。威毛は黒糸による素懸威(すがけおどし)である。特筆すべきは、裾の二段が赤(または緋色)のビロードで包まれている点で、これは騎乗時に草摺が馬の鞍に当たって音を立てるのを防ぐための、忠興自身による実戦的な工夫と伝えられている
7
。揺糸(ゆるぎいと)の下には腰鎖(こしぐさり)が九枚設けられている。
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小具足類
:
-
籠手(こて)
: 篠籠手(しのごて)形式で、鉄の細い板(篠)を鎖で繋いでいる。立挙(たてあげ)と家地(いえじ)を設けないのが三斎流の特徴とされる。摘手甲(つかみてっこう)は黒鉄製。家地は麻地の藍染めである
7
。
-
臑当(すねあて)
: 篠臑当形式で、「越中臑当」とも呼ばれる。九本の鉄地黒漆塗の篠を鎖で繋いでいる。籠手同様、家地を設けないのが特徴である
7
。
-
佩楯(はいだて)
: 鉄篠(てつしの)を三段に鉄の綴じ具で連結した形式。家地は麻の藍染めで、裏は麻地の縞文様である
7
。
-
頬当(ほおあて)
: 「越中頬」と呼ばれる形式で、鉄錆地に打出(うちだし)で作られ、顎のみを覆う小型のものである。垂れは三段で、鉄板札を黒革で包み、黒糸で素懸威にしている
7
。
-
三斎流(さんさいりゅう)/越中流(えっちゅうりゅう)としての特色:
この具足は、細川忠興が自身の豊富な実戦経験に基づいて考案した、極めて実用的かつ合理的な形式であり、一般に「三斎流具足」あるいは「越中流具足」として知られている 7。その最大の特徴は、華美な装飾を極力排し、軽量性と運動機能性を徹底的に追求した簡素な構造にある 7。色彩も黒や栗色といった地味なものが多く、実戦本位でありながらも、洗練された品格を感じさせる仕立てとなっている 45。この越中流の様式は、他の大名家でも模倣されるほど影響力を持ち、日本の甲冑の発達史においても重要な位置を占めたと言われる 45。
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歴史的意義:
細川忠興がこの黒糸威横矧二枚胴具足を着用して関ヶ原の合戦に臨み、勝利を収めたという「嘉例(かれい)」(吉例とも)に基づき、細川家ではこの具足を「御吉例御具足(おきちれいおんぐそく)」と称し、神聖視した 7。その結果、江戸時代を通じて歴代の熊本藩主や家臣たちが製作する具足も、この三斎流の形式を規範とすることが奨励された。これは、単に実用的な甲冑の様式というだけでなく、細川家の武威や伝統を象徴する「御家流(おいえりゅう)」として確立されたことを意味する。
この具足は、戦国末期の武将たちが甲冑に求めたリアリズムと合理的な精神性を見事に体現している。装飾性よりも実用性を優先する姿勢は、茶人「利休七哲」の一人としても知られる文化人であった忠興の、無駄を削ぎ落とした機能美を尊ぶ美意識とも通底するものがあるかもしれない。また、この具足が一つの様式として「御家流」となり、後代にまで継承された事実は、武具が単なる戦闘装備品であるに留まらず、家の歴史やアイデンティティ、武家の誇りを象徴する重要な役割を担っていたことを如実に示している。
4.2. その他の黒糸威の具足、横矧胴の具足の作例
細川忠興所用のもの以外にも、黒糸威や横矧構造を持つ当世具足、あるいはそれらと様式的に比較しうる著名な作例が各地の博物館やコレクションに現存している。これらの具足を比較検討することで、当時の甲冑製作における技術的な共通性や、武将ごとの個性、地域的な特色などを探ることができる。
-
林原美術館蔵「黒塗黒糸威桶側胴具足」
: 桃山時代の作で、織田信長の乳兄弟であり、後に豊臣秀吉に仕えた池田恒興(いけだつねおき)が所用したと伝えられる
25
。胴は黒漆塗の横板を接いだ桶側胴で、二枚胴形式。胸板には赤銅魚々子地(しゃくどうななこじ)に唐草文様を彫った覆輪(ふくりん)が施されている。
121
では、池田輝政所用伝で、その孫である池田光政の製作関与の可能性も示唆されている。
-
東京国立博物館蔵「黒糸威二枚胴具足」(榊原康政所用)
: 江戸時代17世紀の作で、徳川四天王の一人、榊原康政(さかきばらやすまさ)が所用したと伝わる重要文化財
18
。胴は黒漆塗の鉄板を菱形に綴じ合わせた二枚胴で、左脇が蝶番で開閉する構造である
53
。この「鉄板を菱に綴じ」という技法は、桶側胴の製作技法にも通じるものがある。
-
個人蔵(三河武士のやかた家康館寄託)「黒糸威胴丸具足」(本多忠勝所用)
: 徳川四天王の一人で、「生涯無傷」と称された猛将・本多忠勝(ほんだただかつ)が用いたとされる具足で、重要文化財に指定されている
18
。兜の脇立に大きな鹿の角を配し、肩からは大念珠を掛けるという極めて個性的な姿で知られる。胴は鉄の蝶番で繋がれた二枚胴で、小札は黒漆塗の切付板札(きっつけいたざね)である
61
。「切付板札」は、一枚の板に小札の形を刻み込んで多数の小札が連なっているように見せる技法で、これも横矧胴の構造的要素を持つものと言える。
-
福岡市博物館蔵「銀箔押一の谷形兜・黒糸威五枚胴具足」(黒田長政所用)
: 関ヶ原合戦や大坂の陣で活躍した黒田長政(くろだながまさ)所用の具足
63
。兜は後頭部が極端に高い「一の谷形兜(いちのたになりかぶと)」という特異な形状で知られる。胴は黒糸で威された五枚胴である。なお、東京国立博物館には「伝黒田高政(長政の子)所用 黒糸威胴丸具足」も所蔵されている
18
。
-
久能山東照宮蔵「伊予札黒糸威胴丸具足」(徳川家康所用、「歯朶具足」)
: 徳川家康が関ヶ原合戦で着用したとも、大坂の陣で着用したとも伝えられる重要文化財
18
。兜の前立に歯朶(しだ)の葉を配していることから「歯朶具足(しだぐそく)」の通称で知られる。胴は伊予札(いよざね)を黒糸で素懸威にしている。伊予札は比較的小さな板札を横方向に連結するものであり、これも横矧胴の一形態と解釈できる。
-
仙台市博物館蔵「黒漆五枚胴具足」(伊達政宗所用、「仙台胴」)
: 奥州の覇者・伊達政宗(だてまさむね)が用いたとされる、黒漆塗の五枚の鉄板を縦に矧ぎ合わせた「縦五枚矧ぎ」の胴を持つ具足で、重要文化財
29
。威しは紺糸素懸威である
71
。これは横矧胴ではないが、当世具足の代表的な作例として、また地域的な特色を持つ「仙台胴(雪ノ下胴)」として比較対象となる。
これらの作例を概観すると、「黒糸威」という色彩の選択や、「横矧胴」あるいはそれに類する板札構造の胴は、特定の武将や流派に限定されることなく、戦国時代後期から江戸時代初期にかけて広く採用された、実戦的で合理的な甲冑の要素であったことがうかがえる。一方で、兜の形状(細川忠興の越中頭形、本多忠勝の鹿角脇立、黒田長政の一の谷形、家康の歯朶前立大黒頭巾形兜、伊達政宗の三日月形前立筋兜など)や小具足の細部の意匠、威し方(素懸威、毛引威など)には、それぞれの武将の個性や、製作に携わった甲冑師の技術的特色が色濃く反映されている点も興味深い。
表2:「黒糸威横矧具足」及び関連する著名具足の比較一覧
具足名称
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所用者(伝承含む)
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製作年代
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所蔵機関
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胴の形式
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威糸の色と種類
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兜の特徴
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その他の顕著な特徴
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文化財指定
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黒糸威横矧二枚胴具足
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細川忠興
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安土桃山 (16世紀)
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永青文庫
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横矧二枚胴、鉄板札皺革包
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黒糸素懸威
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黒漆塗頭形兜(越中頭形)、革製、山鳥尾羽立物
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三斎流(越中流)、軽量・実用的、草摺裾に赤ビロード
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熊本県指定有形文化財
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黒塗黒糸威桶側胴具足
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池田恒興(伝)
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桃山時代
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林原美術館
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横板接桶側胴、二枚胴
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黒糸
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頭形鉢、見上眉打出、日根野形一段吹返(赤銅泊蝶据紋)
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胸板に赤銅魚々子地唐草彫覆輪
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黒糸威二枚胴具足
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榊原康政
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江戸 (17世紀)
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東京国立博物館
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二枚胴、鉄板菱綴
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黒糸
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六十二間筋兜(吉道作銘)、銅鍍金三鈷剣前立
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胴腰に銀金貝金蒔絵這龍文、草摺裾に立波文
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重要文化財
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黒糸威胴丸具足
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本多忠勝
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安土桃山
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個人蔵(三河武士のやかた家康館寄託)
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二枚胴、黒漆塗切付板札
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黒糸素懸威
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黒漆塗十二間筋兜、大鹿角脇立、木製黒漆塗双角付獅噛前立
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肩に大念珠
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重要文化財
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銀箔押一の谷形兜・黒糸威五枚胴具足
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黒田長政
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安土桃山
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福岡市博物館
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五枚胴
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黒糸
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一の谷形兜(銀箔押)
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変わり兜の代表例
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福岡県指定有形文化財
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伊予札黒糸威胴丸具足(歯朶具足)
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徳川家康
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桃山~江戸
|
久能山東照宮
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伊予札(碁石頭切付札縫延)胴丸
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黒糸素懸威
|
角頭巾形兜(鉄黒漆塗打出)、木犀黒漆塗獅噛彫・金箔押日輪形・左右革製金箔押歯朶前立
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歴代将軍が写しを製作
|
重要文化財
|
黒漆五枚胴具足(仙台胴)
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伊達政宗
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桃山 (16世紀)
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仙台市博物館
|
縦五枚矧ぎ(雪ノ下胴/仙台胴)
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紺糸
素懸威
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黒漆塗六十二間筋兜(宗久銘)、革製金箔押新月形前立
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質実剛健な作り、仙台藩の規範
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重要文化財
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鉄黒漆丸龍蒔絵横矧二枚胴紅糸胸取威具足
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不詳
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江戸時代
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名古屋刀剣博物館(刀剣ワールド財団)
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横矧二枚胴
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紅糸
胸取威
|
六字名号前立
|
胴に丸龍蒔絵
|
|
この表からもわかるように、「黒糸威」と「横矧(またはそれに類する板札構造の胴)」は、戦国後期から江戸初期にかけての実戦的な当世具足において、広く見られる組み合わせであった。しかし、細部の構造や意匠、兜の形状などは武将の個性や甲冑師の流派によって多様であり、一概に標準化されていたわけではない。
5. 製作技術、甲冑師、生産地域
「黒糸威横矧具足」の製作には、当時の高度な金属加工技術、漆工技術、皮革加工技術、そして組紐や染織の技術が集約されていた。これらの技術を担ったのが専門の甲冑師であり、彼らは特定の流派を形成し、各地の有力大名のお抱えとなるなどして活動した。
5.1. 横矧胴の具体的な製作技法
横矧胴の製作は、概ね以下の工程を経て行われたと考えられる。
-
板札の加工
: まず、素材となる鉄板または革(主に牛革をなめして固めた練革)を、設計に基づいた所定の形状と寸法に裁断する。鉄板の場合は、鍛造によって強度を高め、打ち出しや曲げ加工によって身体の曲線に合わせた形状に成形する
18
。
18
は、板札の出現が生産の簡易化を目的としていたと指摘している。
-
漆塗
: 加工された板札の表面には、防錆、耐久性の向上、そして美観のために漆が塗布される。黒漆が基本であるが、朱漆や金箔押しなども見られる
7
。
-
威し(おどし)作業
: 黒糸をはじめとする威糸を用いて、加工・漆塗された板札を水平方向に、そして上下に連結していく。威し方には、糸を疎らに通す「素懸威(すがけおどし)」や、糸を密に通して毛のように見せる「毛引威(けびきおどし)」など、いくつかの種類がある
5
。黒糸威横矧具足の場合、その名の通り黒糸が用いられる。
-
鋲留め・綴じ
: 板札同士を連結する具体的な方法としては、鉄製の鋲を用いる「鋲留め」
15
や、革緒や組紐を用いて菱形や畦目状に綴じ合わせる「菱綴(ひしとじ)」「畦目綴(うなめとじ)」などの技法が用いられた
16
。これにより、板札は強固に連結され、一枚の胴として形成される。
-
蝶番の取り付け
: 胴のパーツ(多くは前胴と後胴)を蝶番で連結し、開閉可能にする。
5.2. 主要甲冑師流派と横矧具足製作との関連
戦国時代から江戸時代にかけては、多くの甲冑師が活動し、それぞれが独自の技術や作風を発展させ、流派を形成した。これらの流派と横矧具足の製作との関連については、以下のような点が考えられる。
-
明珍派(みょうちん)
: 甲冑師の中でも特に名高い流派の一つで、平安時代末期から江戸時代末期まで長きにわたり活動した。主に兜の製作で知られ、特に良質な筋兜(すじかぶと)を数多く手がけた
17
。
84
で紹介されている「鉄錆地連山道横矧紺糸胸取二枚胴具足」の兜は、明珍派の甲冑師である兼光の作とされている。このことから、明珍派が兜だけでなく、横矧構造を持つ胴を含む具足全体の製作にも関与していた可能性が高い。
-
春田派(はるた)
: 大和国(現在の奈良県)を発祥の地とし、室町時代から江戸時代にかけて活動した甲冑師の系統
81
。阿古陀形筋兜(あこだなりすじかぶと)の製作を得意としたとされる。現存する作品に銘を刻むようになったのは春田派が先駆けとも言われている。
-
岩井派(いわい)
: 大和国に興り、室町時代末期から江戸時代にかけて活躍した甲冑師の一派
81
。明珍派や春田派が甲冑の鍛冶作業を主としたのに対し、岩井派は威しや仕立てといった最終的な組上げ作業を専門としたとされている。徳川家康所用の「伊予札黒糸威胴丸具足(歯朶具足)」は、岩井派の岩井与左衛門の作と伝えられている
82
。仕立てを主とする流派であったため、横矧胴を含む様々な形式の胴の製作に対応できたと考えられる。
-
その他の甲冑師・流派
: 上記以外にも、伊達政宗の仙台胴の源流となった鎌倉雪ノ下の甲冑師
69
や、個々の具足に名を残す甲冑師(例:因州住兼光
84
)などが存在する。
これらの甲冑師の流派は、それぞれが得意とする分野や独自の作風を持っていたと考えられるが、当世具足という新しい様式の需要が高まる中で、横矧胴のような新しい製作技法も積極的に取り入れ、多様な甲冑を生み出していったと推測される。特に、大名のお抱えとなった甲冑師たちは、主君の好みや実戦での要求に応じた特注品を製作する機会も多かったであろう。
5.3. 主要生産地域における甲冑製作の特徴と「黒糸威横矧具足」の作例
甲冑の生産は、全国各地で行われていたが、特に有力な大名の城下町や、古くから金属加工や工芸技術が発展していた地域に生産の中心地が形成された。
-
奈良
: 古代より寺社勢力が強く、多くの工人を有していた奈良は、戦国時代から江戸時代初期にかけて甲冑の一大生産地であった
17
。特に興福寺の配下にあった甲冑師たちは高い技術力を持ち、多くの具足を生産した。
90
の記述によれば、奈良の甲冑師が「黒糸威横矧具足」を得意としていた可能性も示唆されている。漢国神社に伝わる「黒漆切付札茶糸威胴丸具足」
93
など、奈良で製作されたとされる具足も現存する。
-
京都
: 長らく日本の政治・文化の中心であった京都には、各分野の優れた職人が集積しており、甲冑製作においても重要な拠点であったと考えられる。特に、威し糸の染色に関しては、京友禅などに代表される高度な染色技術(例:京黒紋付染
8
)が甲冑の威し糸にも応用された可能性があり、質の高い黒糸威の具足が製作されていたと推測される。
-
加賀(金沢)
: 加賀百万石と称された前田家の城下町である金沢も、武具生産の拠点の一つであった
7
。
179
で紹介されたSotheby'sオークションに出品された横矧胴の具足は、その様式から加賀での製作が示唆されている。
-
仙台
: 伊達政宗のお膝元である仙台では、政宗自身が甲冑製作に深く関与し、「仙台胴(雪ノ下胴)」と呼ばれる独自の様式を生み出した
7
。これは縦五枚矧ぎの形式であるが、特定の地域における甲冑生産の特色を示す好例である。
甲冑の生産は、このように大名の拠点や古くからの工芸の中心地と密接に関連していた。各地域では、入手可能な素材や伝統的な技術、そしてその地を治める大名の好みなどに応じて、独自の甲冑様式や技術が発展し、それが「お国具足」といった形で認識されていた可能性も考えられる。「黒糸威横矧具足」についても、特定の地域で特に多く生産されたり、あるいはその地域ならではの細部の意匠や構造的特徴を持つものが存在したかもしれない。
6. 「黒糸威横矧具足」の実用性と評価
「黒糸威横矧具足」は、戦国時代という実戦が繰り返された時代に生まれた当世具足の一形式であり、その実用性、特に防御機能と運動性は、当時の武士にとって死活問題であった。
6.1. 防御機能
-
耐鉄砲性
: 当世具足が開発された大きな理由の一つが、鉄砲の登場とその威力への対応であった
2
。横矧胴は、鉄板を主要な素材とし、隙間を極力減らす構造を目指したものであり、従来の小札を威した甲冑に比べて高い耐弾性が期待された。特に、胴の前面など重要な部分には厚手の鉄板が用いられたと考えられる。
-
「試し胴」の記録
: 当時の甲冑、特に胴については、実際に鉄砲で射撃してその防御性能を試す「試し胴」が行われたという記録や伝承が存在する
109
。
109
には、1990年代にアメリカで行われた実験として、雑兵鎧が50mの距離から発射された火縄銃の弾丸3発によって容易に前後を撃ち抜かれたという記述がある。これはあくまで一般的な雑兵鎧の例であり、武将が着用するような入念に製作された良質な当世具足、特に横矧胴の耐弾性については、さらに詳細な史料や実験に基づく検証が必要である。
40
、
40
、
40
では、試し胴に関する具体的な史料や研究は限定的であると示唆している。 横矧胴に用いられる板札構造は、小札を重ね合わせた伝統的な構造と比較して、衝撃を受けた際に力を分散させやすく、一点に集中するエネルギーを軽減する効果があった可能性がある。これにより、鉄砲玉の貫通を防ぐ上で有利に働いたと推測される。しかしながら、戦国時代から江戸時代初期にかけて鉄砲自体の性能も向上しており、また使用される距離や角度、弾丸の種類によっても甲冑の防御効果は大きく変動するため、いかなる状況でも完全に銃弾を防ぎきれたわけではないことは、多くの戦死者の記録からも明らかである。甲冑の製作においては、常に防御力と運動性、そして重量との間の最適なバランスを見出すことが大きな課題であった。
6.2. 運動性と重量
戦場での生存性を高めるためには、高い防御力だけでなく、俊敏に動ける運動性も不可欠であった。
-
軽量化の試み
: 当世具足は、一般的に従来の甲冑よりも軽量化が図られたとされるが、鉄板を多用する以上、ある程度の重量は避けられなかった
2
。例えば、江戸時代以前の甲冑の重量は、戦国末期のものでも15kgから20kg程度、古い時代の大鎧では40kgから50kgにも及んだという記述がある
112
。細川忠興所用の黒糸威横矧二枚胴具足は、軽量性がその大きな特徴の一つとされている
7
。
-
構造と運動性
: 横矧胴のような板札構造の胴は、それ自体では柔軟性に乏しい。そのため、胴を複数のパーツに分割して蝶番で連結したり、草摺の取り付け方や揺糸の長さを工夫したりすることで、着用者の動きを極力妨げないような配慮がなされていた
1
。例えば、
17
で言及されている「足掻胴(あがきどう)」は、横矧の桶側胴の各板を固定せず、鋲穴を縦長にして鋲が上下にスライドできるようにすることで、屈伸運動を可能にしたとある。
-
着用感
: 甲冑を着用しての長時間の行軍や戦闘は、武士にとって極めて過酷なものであったと想像される。
180
、
181
、
182
、
183
、
46
、
17
、
184
、
46
、
105
、
133
などの資料には、甲冑の着用感や実戦での評価に関する断片的な情報が含まれている場合があるが、体系的な記録は少ない。 横矧胴は、板札を用いることで構造的に堅牢さを確保できる反面、柔軟性に欠けるという課題を抱えていた。これを克服するために、蝶番の多用や、身体の動きに追従しやすいような各部品の連結方法など、様々な工夫が凝らされた。武将の体力や戦場での役割(騎馬か徒歩か、前線か後方かなど)によって、求められる防御力と運動性のバランスは異なり、それに応じて甲冑の仕様も調整されたと考えられる。
6.3. 当時の武将や甲冑師による評価(史料に基づく)
現存する史料や伝承からは、当時の武将や甲冑師が甲冑に対してどのような評価を下し、何を重視していたかをうかがい知ることができる。
-
細川忠興が、自身の豊富な実戦経験に基づいて、装飾を排し実用本位の「三斎流」と呼ばれる形式の具足(黒糸威横矧二枚胴具足)を考案したことは、当時の武将が甲冑に求めた機能性や合理性を端的に物語っている
7
。
-
伊達政宗が、自身が推奨した雪ノ下胴(仙台胴)について、その重量に関して「重さは各自の器量次第である」と述べたと伝えられる逸話
69
は、甲冑の実用性とともに、それを着こなす武士の気概や覚悟をも重視していたことを示唆している。
-
立花家史料館に残る武具類の台帳には、文禄・慶長の役(朝鮮出兵)の際に、立花宗茂が所用していた具足の袖を家臣に与え、その後別の家臣から新たな袖を献上されたという記録があり
46
、実戦での使用状況や、戦場での必要に応じた甲冑の改修・部品交換が行われていた様子を伝えている。
これらの史料から読み取れるのは、戦国時代の甲冑が、単なる受け継がれた形式に則って製作されるだけでなく、実戦での経験や教訓がその改良にダイレクトに反映されていたという事実である。そして、甲冑は単なる身を守るための道具であるに留まらず、それを用いる武将の思想や美意識、さらには家の威信や個人の武勇を戦場で示すための重要なメディアでもあったということである。黒糸威横矧具足もまた、こうした厳しい時代の要求と武士の精神性を体現した甲冑の一つとして評価されるべきであろう。
7. 文化財としての価値と後世への影響
「黒糸威横矧具足」および関連する形式の甲冑は、戦国時代から江戸時代初期という日本の歴史における大きな転換期に製作され、使用された武具であり、今日ではその歴史的・美術的価値から重要な文化財として認識されている。
7.1. 現存する「黒糸威横矧具足」及び関連具足の作例
国内外の博物館や個人コレクションには、数多くの「黒糸威横矧具足」や、黒糸威、あるいは横矧構造を持つ類似の当世具足が現存している。その中でも特に代表的なものや、文化財として指定されているものを以下に挙げる。
-
永青文庫蔵「黒糸威横矧二枚胴具足」(細川忠興所用)
: 本報告書で繰り返し言及している、安土桃山時代の作とされ、熊本県指定有形文化財に指定されている代表的な黒糸威横矧具足である
7
。
-
林原美術館蔵「黒塗黒糸威桶側胴具足」(伝池田恒興所用)
: 桃山時代の作で、横板を接いだ桶側胴(横矧胴の一種)を持つ黒糸威の具足
25
。
-
東京国立博物館蔵「黒糸威二枚胴具足」(榊原康政所用)
: 江戸時代17世紀の作で、重要文化財。胴は黒漆塗の鉄板を菱に綴じた二枚胴
18
。
-
福岡市博物館蔵「銀箔押一の谷形兜・黒糸威五枚胴具足」(黒田長政所用)
: 福岡県指定有形文化財。胴は黒糸威の五枚胴
63
。
-
久能山東照宮蔵「伊予札黒糸威胴丸具足」(徳川家康所用、「歯朶具足」)
: 重要文化財。伊予札を用いた黒糸威の胴丸
62
。
-
徳川美術館蔵「熊毛植黒糸威具足」(徳川家康・義直所用)
: 胴や小具足に熊の毛を植え付け、黒糸で威した特異な意匠の具足
73
。
-
海外博物館所蔵品:
メトロポリタン美術館(ニューヨーク)やボストン美術館をはじめとする海外の主要な博物館にも、日本の甲冑コレクションが多数所蔵されている 125。これらのコレクションの中には、「黒糸威」で「横矧構造」を持つ当世具足が含まれている可能性は高いが、個々の所蔵品の詳細な調査が必要である。例えば、125のHigh Museum of Artの展示では「Armor of the Yokohagidō Type」が複数紹介されており、その中には17世紀から18世紀にかけての作例で、鉄、金、絹、漆、革などで作られたものが含まれている。179のSotheby'sのオークションに出品された「gomai-yokohagi style tosei gusoku」は、19世紀江戸時代の作で、胴は黒漆塗りの鉄製五枚横矧ぎ、威しは濃い青色の鹿革とされており、黒糸威ではないが横矧胴の例として参考になる。
-
国宝・重要文化財指定品:
上記に挙げた作例の多くが、その歴史的・美術的重要性が認められ、国宝や重要文化財に指定されている 7。
「黒糸威横矧具足」という名称で国宝に指定されたものは現在のところ確認できないが、「黒糸威大鎧」や「黒韋威胴丸」など、黒色を基調とした威しを持つ甲冑の中には国宝指定品が存在する 131。
現存する作例の多くが、細川忠興、榊原康政、本多忠勝、黒田長政、徳川家康といった歴史的に著名な武将の所用と伝えられている点は特筆に値する。これは、「黒糸威横矧具足」およびそれに関連する形式の甲冑が、単なる一般兵卒の装備ではなく、高い地位にある武将たちによっても積極的に選択され、使用された実戦的な武具であったことを示唆している。特に、これらの武将の多くが実戦経験豊富であったことを考慮すると、彼らが選んだ具足は、当時の甲冑の機能性や実用性を知る上で第一級の歴史史料と言えるだろう。
表3:現存する「黒糸威横矧具足」及び関連する重要文化財リスト(一部)
指定名称
|
所用者(伝承)
|
製作年代
|
所蔵機関
|
文化財指定
|
指定年月日
|
簡単な特徴
|
黒糸威横矧二枚胴具足
|
細川忠興
|
安土桃山 (16世紀)
|
永青文庫
|
熊本県指定有形文化財
|
2019年3月26日
|
越中頭形兜(山鳥尾羽立物)、横矧二枚胴、黒糸素懸威、三斎流。関ヶ原合戦着用伝。
|
黒糸威二枚胴具足〈兜・小具足付〉
|
榊原康政
|
江戸 (17世紀)
|
東京国立博物館
|
重要文化財
|
1978年6月15日
|
鉄板菱綴二枚胴、六十二間筋兜(吉道作銘)、銅鍍金三鈷剣前立。
|
黒糸威胴丸具足〈鹿角脇立兜・小具足付〉
|
本多忠勝
|
安土桃山
|
個人蔵(家康館寄託)
|
重要文化財
|
1977年6月11日
|
二枚胴、黒漆塗切付板札、黒糸素懸威、大鹿角脇立兜、肩に大念珠。
|
伊予札黒糸威胴丸具足〈兜・小具足付〉(歯朶具足)
|
徳川家康
|
桃山~江戸
|
久能山東照宮
|
重要文化財
|
1966年6月11日
|
伊予札黒糸素懸威胴丸、角頭巾形兜、歯朶前立。関ヶ原合戦着用伝。
|
黒漆五枚胴具足〈兜・小具足付〉(仙台胴)
|
伊達政宗
|
桃山 (16世紀)
|
仙台市博物館
|
重要文化財
|
1979年6月6日
|
紺糸
素懸威、縦五枚矧胴(雪ノ下胴)、六十二間筋兜(宗久銘)、新月形前立。
|
銀箔押一の谷形兜・黒糸威五枚胴具足〈小具足付〉
|
黒田長政
|
安土桃山
|
福岡市博物館
|
福岡県指定有形文化財
|
1977年6月11日
|
黒糸威五枚胴、一の谷形兜(銀箔押)。
|
このリストは一部であり、他にも多くの貴重な作例が存在する。これらの文化財は、日本の甲冑史、武士の文化、そして当時の工芸技術を理解する上で欠くことのできない重要な遺産である。
7.2. 美術的評価
「黒糸威横矧具足」は、実用的な武具であると同時に、戦国武将の美意識を反映した美術工芸品としての側面も持つ。
-
意匠と色彩
: 黒糸威は、赤糸威や色とりどりの糸を用いた派手な威しに比べて、一見地味で落ち着いた印象を与える。しかし、黒漆塗りの胴や兜と組み合わされることで、全体として引き締まった重厚感と精悍(せいかん)な力強さを醸し出す。この黒という色彩は、武家の質実剛健な気風を象徴するとともに、戦場における威圧感や、ある種の神秘性を演出する効果もあったと考えられる。
-
装飾性
: 当世具足は、実用性を最優先としつつも、兜の立物(まえだて、わきだて、かしらだて等)や胴の表面への蒔絵(まきえ)、あるいは金具の意匠などに、着用する武将の個性や思想、信仰などが色濃く反映される場合が多い
1
。細川忠興所用の具足に見られる山鳥の尾羽を用いた優雅な兜の立物や、本多忠勝の鹿角脇立兜の豪壮な姿などは、その代表例と言える。これらの装飾は、単なる飾りではなく、戦場での自己の識別、武威の誇示、そして時には神仏への祈願といった多層的な意味合いを込めて施されたものであった。
7.3. 歴史資料としての価値
「黒糸威横矧具足」および関連する甲冑は、文献史料だけではうかがい知ることのできない、戦国時代の武士の姿や戦闘の実態、工芸技術の水準などを具体的に示す貴重な歴史資料である。
-
合戦図屏風や武将肖像画における描写例
: 関ヶ原合戦図屏風や大坂の陣図屏風といった合戦を描いた絵画資料には、当時の武士たちが様々な甲冑を身に着けて戦う様子が生き生きと描写されている
7
。これらの屏風絵の中に、特定の武将が「黒糸威横矧具足」を着用している場面を正確に特定することは、描写の細かさや保存状態、あるいは絵師の表現意図などにより困難な場合も多い。しかし、
135
の記述によれば、大坂夏の陣図屏風に描かれた後藤基次や本多忠朝が黒糸威の鎧を着用していたとの記録(『難波戦記』など)があるが、屏風の図像とは必ずしも一致しない部分もあるとされている。細川忠興の黒糸威横矧具足は、関ヶ原合戦で着用されたと伝えられており
7
、合戦図屏風の考証においても重要な手がかりとなる。 また、戦国武将の肖像画の中にも、甲冑を着用した姿で描かれたものが存在する
7
。これらの肖像画に「黒糸威横矧具足」が明確に描かれている作例を特定し、その詳細を分析することは、今後の研究課題の一つと言える。 これらの絵画資料は、甲冑の実際の使用状況や、当時の人々が甲冑に対していかなるイメージを抱いていたかを間接的に示唆するものである。ただし、絵画は必ずしも現実を忠実に写し取ったものではなく、制作者の様式や注文主の意図、あるいは後世の理想化などが含まれる場合があるため、現存する甲冑そのものとの比較検討を通じて、慎重に解釈する必要がある。
7.4. 保存と修復に関する現代的課題
甲冑は、鉄、革、漆、絹糸、麻、木材、金銀などの金属といった、多種多様な有機物および無機物から構成される複合的な工芸品である。そのため、それぞれの素材に適した温湿度管理など、保存環境の維持が極めて難しく、経年劣化は避けられない
9
。特に、威しに用いられる絹糸や麻糸、あるいは染織が施された革や布地は、光(特に紫外線)や温湿度の急激な変化、虫害などに対して脆弱であり、色褪せや脆化(ぜいか)、断裂といった損傷を受けやすい。
文化財として甲冑を修復する際には、オリジナルの素材や製作技法を最大限に尊重し、可能な限り製作当初の姿を維持することが原則となる。そのためには、材質の科学的な分析や、古記録・古文献の調査、そして伝統的な技術を習得した専門家による高度な知識と技術が不可欠である 9。169では、甲冑修復の際に威し糸の色を科学的に分析し、当初の色を復元しつつも、現存する部分の退色状況を考慮して色調を調整した事例が紹介されている。
「黒糸威横矧具足」のような複合素材からなる文化財の保存と修復は、単にその物理的な形状を後世に伝えるだけでなく、製作当時の技術や素材に関する情報、歴史的背景、そしてそれらを通じてうかがえる製作者や使用者の思想や美意識といった無形の価値をも含めて継承していくという、重要な使命を担っているのである。
8. おわりに
本報告書では、日本の戦国時代から江戸時代初期にかけて特徴的に見られる甲冑の一形式、「黒糸威横矧具足」について、その呼称の定義から始め、構造、素材、製作技法、歴史的背景、代表的な作例、そして文化的意義に至るまでを、現存する資料や研究成果に基づいて詳細に検討してきた。
「黒糸威横矧具足」は、戦国時代の激しい合戦と社会の大きな変動の中で、実用性と機能性を徹底的に追求した結果として生まれた「当世具足」の一つの完成形と評価できる。黒色の威糸は、武家の質実剛健な気風を象徴するとともに、汚れを目立たせないという実用的な側面も有していた。また、鉄や革の板札を水平方向に連結する横矧の構造は、鉄砲という新たな脅威に対する防御力を高めると同時に、従来の複雑な小札仕立ての甲冑に比べて生産性を向上させることにも貢献した。これらの特徴は、戦国時代という時代の要請に見事に応えたものであったと言えるだろう。
日本の甲冑は、古代の短甲・挂甲から、平安・鎌倉時代の大鎧、そして南北朝・室町時代の胴丸・腹巻を経て、戦国時代に当世具足という大きな転換点を迎える。その進化の過程において、「黒糸威横矧具足」は、技術的な合理性と、戦場における実用性、そして武士の美意識が見事に融合した重要な様式として位置づけられる。特に、細川忠興所用の黒糸威横矧二枚胴具足(三斎流具足)に代表されるように、個々の武将の創意工夫や実戦経験、さらにはその思想や美意識が色濃く反映された作例は、戦国武将の多様な個性を現代に伝える貴重な文化遺産である。
今後の研究においては、現存する「黒糸威横矧具足」および関連する甲冑の作例について、より詳細な科学的分析(材質分析、製作技法の解明など)を進めることが期待される。また、未発見の古記録や絵画資料の調査、あるいは甲冑師の系譜や工房、生産地域ごとの特色に関する研究が深まることで、この魅力的な甲冑形式に対する我々の理解はさらに深まるであろう。これらの研究を通じて、「黒糸威横矧具足」が日本の甲冑史、ひいては武家文化史において果たした役割が、より一層明確になることを期待したい。
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真田幸村の甲冑(真田の赤備え)/ホームメイト - 刀剣ワールド
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「大坂夏の陣図屏風」の豊臣秀頼―屏風絵成立をめぐる謎を追う! - 歴史人
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戦国時代の甲冑【後編】有名武将たちが着ていた甲冑は? - 城びと
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分類語彙表 : 増補改訂版 - CORE
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中世後期讃岐における国人・土豪層の贈答・文化芸能活動と地域社会秩序の形成(下)
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甲冑のニオイを消す方法 | 2014緑区桶狭間古戦場まつり | 愛知
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武田信玄の兜とは?五月人形として飾る意味と魅力 - 人形屋ホンポ
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甲冑の着用方法
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佐竹義宣公の甲冑「人色皮包仏胴黒糸縅具足」等を修復! 佐竹史料館所蔵資料修復プロジェクト
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「甲冑記録のとりかた」 井伊家歴代甲冑 朱漆塗桶側二枚胴具足(伝・井伊直孝所用-彦根藩家老印具徳右衛門家伝世-)調査報告から - note
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刀が鞘から抜けないとき/ホームメイト - 名古屋刀剣博物館
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刀剣の収納の歴史|和田ゆきえ|歴史好き整理収納アドバイザー - note
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文化財修復の現状と諸問題に関する研究会報告書
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日本刀の保管・保存・手入れ/ホームメイト - 刀剣ワールド
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【造形】鎧を使い古した感じにしようぜ【加工】|江夏ケイ - note
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重要文化財 縹糸威胴丸 - Kyoto National Museum
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西岡甲房 甲冑・武具・組紐 制作 修復
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日本刀と漆塗り/ホームメイト - 刀剣ワールド
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第28回 古文書の形 - ホームメイト
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甲冑の鑑定(格付け)/ホームメイト - 刀剣ワールド
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【2025年最新】江戸甲冑の人気アイテム - メルカリ
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令和3・4年度 文化庁「生活文化調査研究事業」 報告書
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/seikatsubunka_chosa/pdf/93860001_01.pdf
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侍の言葉 - 侍道-殺陣塾公式サイト
https://www.samuraido-tatejyuku.com/%E4%BE%8D%E3%81%AE%E8%A8%80%E8%91%89/
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2章 調査結果 - 文化庁
https://www.bunka.go.jp/tokei_hakusho_shuppan/tokeichosa/seikatsubunka_chosa/pdf/93860001_03.pdf
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シン・ドウノヘヤ|山梨県身延町
https://www.town.minobu.lg.jp/kinzan/sonota/kinzan-shindos-room.html
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A fine gomai-yokohagi style tosei gusoku [armour] | The helmet ...
https://www.sothebys.com/en/buy/auction/2025/important-japanese-swords-and-armour-from-the-paul-l-davidson-collection/a-fine-gomai-yokohagi-style-tosei-gusoku-armour
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紺威桶側二枚胴具足
https://saga-museum.jp/museum/files/kanpo085.pdf
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紺威桶側二枚胴具足
https://dl.ndl.go.jp/view/prepareDownload?itemId=info%3Andljp%2Fpid%2F10361714&contentNo=1
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歯科材料総合カタログ
http://fdpm.co.jp/cms/wp-content/uploads/2020/08/27f0a11f86e9cec1e8fc21bc88eb2113.pdf
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木材学用語集 | 一般社団法人日本木材学会
https://www.jwrs.org/WTerm/
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弥生時代と古墳時代の軍事組織と社会 - 総研大リポジトリ
https://ir.soken.ac.jp/record/5475/files/A1859%E6%9C%AC%E6%96%87.pdf